契約書条文の無効について
前回の記事の定期借家契約について多少反響が
ありましたので補足を。
定期借家の中途解約について
基本的には中途解約不可ですが
「借主は〇か月前に貸主に報告の上中途解約できる」
という特約を作れば理由のいかんにかかわらず
借主は中途解約できます。
では
「貸主は〇か月前に借主に報告の上中途解約できる」
という条項を設けたら貸主は中途解約
できるのでしょうか?
答えはNOです。
借主がいいよ、と言ってくれれば可能ですが、
借主が「嫌です」と言われれば履行できませんし、
裁判しても貸主に勝ち目はありません。
理由は借地借家法で期間など特定の項目については
借主が保護されているからです。
よく考えてみれば当然なのですが、
例えば1か月前予告で貸主の中途解約を認めた場合、
入居して礼金を1か月払ってさらに引っ越し費用20万円を
払った借主の立場になって考えると、
契約後3日で貸主が中途解約を予告したとします。
たった1か月と3日の契約に対して
礼金1か月、引っ越し費用2回分合計約50万円を払うことに
なります。こんなことを法律が認めていては
社会でトラブルが出てくることでしょう。
ちなみに、口頭で貸主の中途解約を借主が認めて、
契約書にしたためた場合でも無効です。
契約、契約書の条文より法律が優先されます。
ただ、法律的に無効な条文を入れること自体は
法律違反ではないので入れることはできます。
契約相手がそれを受け入れるケースもあると思います。
法律を知っていて受け入れるケースより
知らなくて泣く泣く受け入れている人も
大勢いることでしょうが。
あと、事業用の賃貸借契約でたまに聞くのですが、
「賃料は契約期間中変更しない」
という条文が有効になるのは定期借家契約のみです。
普通借地、定期借地、普通借家では有効にならず、
有効にならないだけではなく、
「貸主は賃料値上げ交渉できないが、
借主は値下げ交渉できる」
という解釈になるのではないかとされています。
借主に不利な条項は無効という法令解釈で
判例がないので絶対ではありませんが。
また、来年4月には民法改正があります。
大きな金額の契約をする場合は
自分でも勉強をするか、
時間がない場合は多少の費用を払って
宅建業者、司法書士、弁護士などに
協力を仰ぐ方が長期的にはメリットが
多いと思います。